2019年04月30日

ペンギンタロットの占い方

ペンギンタロットを使用した、占い方のページ。
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占い方☆過去・現在・未来を表わす3枚のカード 

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占い方☆ギリシャ十字法

円占い☆ 周辺に対する感覚が鍛錬されます。入門編としてもお試しください。
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1. 質問者(自身本人の可能性、体質、姿勢)、
2. 金運(金銭、所有物、収入、損失)、
3. 知恵(知性、旅、通信、コミュニケーション)、
4. 家庭(家庭、愛情 、住居)、
5. 恋愛(娯楽、恋愛、芸術)、
6. 仕事(仕事、健康)、
7. 結婚(結婚、パートナー)、
8. 誕生と死(死、遺産、セックス、誕生)、
9. 精神(旅行、思想)、
10. 地位(職業、社会的地位)、
11. 仲間(友達、グループ)、
12. 障害(障害、秘密)、
13. 最終予想
(表示されたカードを集約した上での結末)

占い方☆ケルト法

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携帯からペン銀舎のタロット占い方など、手軽に検索できます。

ペンギンタロットはAmazon販売中
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2019年04月29日

『囲碁の力』石井妙子

第一章 囲碁を打つ
囲碁の別称、別名  盤上は宇宙空間  碁盤と碁石の美  始める前にマナーを知る
いよいよ囲碁入門――ルールは六つ  ルール1「交互に打つ」  
ルール2「交点に打つ」
ルール3「一度打った石は動かせない」  
ルール4「囲めば取れる」
ルール5「打てないところがある」  ルール6「すぐには打てないところがある(コウ)」

  碁盤は広いキャンバス
第二章 囲碁を知る
中国から日本へ  王朝文化の華やぎとともに  紫式部と囲碁  枕草子の囲碁描写
武士の世で  プロの碁打ち・棋士の誕生  家元制の誕生  裾野の広がり  家元制から実力性へ

第三章 囲碁を考える
棋士という職業  世界に広がる囲碁  女はどこまで強くなれるか  コンピュータと囲碁
囲碁は年齢を越えて               (2002年10月21日 初版発行)

 囲碁は、盤上にある路(線)と路(線)の交わった交点に互いに自分の石を置きあい、より多く陣地を取ったほうが勝ち、という陣取りゲームである。(中略)この交点の数はというと、十九路×十九路=三六一。

 さて、では、この三六一という数字、これが何かというと古代中国の一年の日数にあたる。三六一から万物の始まりである一を引く(それが碁盤上、中心の星、天元をさす)。残りの三六〇を四等分した九〇が春夏秋冬の日数を示すそうだ。
 また、碁盤は一番外側の線を一線、その一つ中側を二線、さらにその内側を三線、と呼ぶが、一線の交点を数えると一辺が十九路×四辺=七六路。七六から重複する四路を引くと七二。古代中国では日数を数えるうえでの単位五日を一候とし、一候の六回分を一ヵ月、その十二ヵ月分を一年とした。一年はすなわち六候×一二=七二候。つまり盤上の一線の一巡りが一年を表している、とも言う。
 盤は四角い方形である。「方」は大地の象り。地の上に線を表すことで、地上の時の移ろいを表す。それが、碁盤の成り立ちであると、古い本にはそう記されている。(
『囲碁の力』石井妙子P22-24)
碁盤の目は中国では1年間を表していた。三六〇を四等分した九〇が春夏秋冬の日数という季節を示しているということらしい。単なる遊戯の碁石だった可能性がありそうだ。

文字もない時代から日付と天候を表わしたという。19路盤で361あるので、晴れた日は白、雨なら黒と置いていく。
雨の多い梅雨とか、盤に石の置く位置で日付が分かる。春夏秋冬の季節が客観的に分かり、天候を予測して占える。
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2019年04月28日

「冬虫夏草」の免疫力

古来より東洋医学の生薬として不老長寿、強壮の秘薬として使われた。鎮静や鎮咳薬として病後の衰弱や肺結核などに用いられた。名の由来には冬は虫で夏になると草(キノコ)になると信じられて「冬虫夏草」といわれる。
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原色和漢薬図鑑には「冬虫夏草は肺、腎を益し、精髄を補い、血を止め、痰を化し、労嗽をとめ、虚損を補う効があり、疲労、咳嗽、咳血、陽痿、遺精、腰膝の疼痛などの症に用いられ、強壮、鎮静、鎮咳薬として、病後の虚弱症、インポテンツ、肺結核の吐血、老人性慢性咳嗽、盗汗、自汗、貧血症などに応用される」と記される。

  • 疼痛、炎症、体重減少、鬱、腹水、胸水、低蛋白、炎症、低血糖、食欲不振にも効果がある。
  • メラトニンは冬虫夏草のコルジセプス属の培養液に多く含まれている。血中のメラトニン量が少ないと癌は増殖して、増えると癌は増殖しにくくなる。
  • 新しい免疫力として研究が期待されている。
  • posted by pengiin at 15:00| 東京 ☀| Comment(0) | 美術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

    2019年04月26日

    『石の眼』安部公房(1960)

    これはダム建設現場を舞台にした「藪の中」ならぬサスペンス「霧の中」となる。前作『第四間氷期』はSF小説だったが、推理小説へ対してドキュメント性をもたらしている。20CCBFAA-5237-4676-A89F-06201F9B20B3.jpeg
    漏水事故に見舞われた建設中ダムで、反目し合う乙川課長(管理担当者)と伊布地次長(施工担当者)が霧に包まれたトンネルに入り、課長が階段に置かれた石に足をとられて危うく転落事故に遭いそうになる。
    誰がどういう目的で石を設置したのだろうか。課長と次長はお互いに相手が殺人未遂の犯人だと考える。
    この事件の前にトンネル内で、怪しい行動を見せた者は数人おり、訪問者である所長の娘・麻子と殺し屋「ネズミ」が目撃する。
    目撃された者と目撃した者は疑心暗鬼に陥り、心理的駆け引きを互いに仕掛ける。ネズミは「建設作業員として働いている受刑者の堀田を殺害する」使命を帯びて、遂行の補助を伊布地に依頼する。当初は拒否されるが、疑惑の進展から依頼を受け入れる。誰が真犯人で誰が殺されるか。登場人物たちは疑惑を抱えたまま、ネズミの殺人を待ち構えるのだった。
     そして公共事業による巨大な暴力を巡る、社会的な問題を孕む内容へと発展する。人里離れた土地の閉塞感の中で様々な疑念が入り混じり、緊迫感のあるダムの描写が綿密に取材を重ねた作者の筆力が次作長編へ開花させる。
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    この後に書かれた「砂の女」は原子力発電が設置される砂丘の村となる。砂だらけの村に迷い込んだ男と、そこに住む女の、奇妙な生活。男、昆虫採集、砂に覆われた貧村、村民の態度、蟻地獄の中の朽ちかけた家、そこに住む女、砂かきという終わりのない単純労働、外された縄梯子、なかなか手に入れられない水……。翌年に浜岡原発が完成した。原子力発電は初の稼働は昭和38年で、小説「砂の女」の発表は37年、映画は39年で、ロケ地は原発建設前の浜岡砂丘だった。
    「責任ってやつは、川の流れと同じことで、さぐっていけば結局は、地面の下にもぐりこんでしまうということだよ」
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    安部公房が現地ルポルタージュした『事件の背景―蜂之巣城騒動記』という、九州の下筌ダム建設をめぐる反対運動を取材を併せて読むと興味深い。

    「真の民衆の側に立った闘争というものは、外部に対する闘争であると同時に、内部の矛盾に対する闘争でもなければならない」安部公房
    posted by pengiin at 14:00| 東京 ☔| Comment(0) | 図書と文庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

    2019年04月25日

    反骨の砦(1964年・日本テレビ)

    日本テレビ・ノンフィクション劇場
    監督:大島渚、吉田実
    語り手:徳川夢声


    「反骨の砦」

    60年安保闘争のころ、北九州筑後川上流で、大きなダム反対運動が起きていた。「蜂の巣城紛争」として名高い、下筌(シモウケ)・松原ダム反対運動である。「暴には暴・法には法」をスローガンに、実力闘争と法廷闘争で全国の注目を集めた。
     80件以上の裁判を提起、安保闘争と三井三池闘争とも連携した。中心となった室原知幸の名とともに、「公共事業史」に刻まれている。
     この運動のまっただ中、河川法の大改正が行われた。昭和河川法である。今日、公共事業見直し議論の高まりの中で、「蜂の巣城」が語られることはない。
     この運動から一番学んだのは、建設省だと言われる。このダム反対運動とは何か? この地で何が起きたのだろうか?

    下筌ダム建設と公共事業において、避けて通れない問題として、1958年から1971年まで13年間に亘って続いたダム史上最大の反対運動「蜂の巣城紛争」がある。
    城主となった室原知幸が考案した代執行の妨害は、川にたくさんのアヒルを放し、牛や馬までも抗議活動に参加させたり、糞尿をばら撒いた。
    千早城に立て籠もった楠正成を想わせる闘争。蜂の巣城のあちこちに水道管を張り巡らせて、周囲の木に支援者の名札をくくりつけ対抗していった。この闘争記念樹は現在の公共事業の反対運動にみられる「立ち木トラスト」の原点となった。
    「蜂の巣城紛争」
    蜂の巣城紛争では室原が語った「公共事業は理に叶い、法に叶い、情に叶わなければならない」。
    posted by pengiin at 10:00| 東京 ☁| Comment(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

    2019年04月24日

    梅棹忠夫「文明の生態史観」(中央公論文庫)

    『文明の生態史観』は、戦後提出された最も重要な「世界史モデル」の一つであろう。それは、これまで東と西、アジア対ヨーロッパという、慣習的な座標軸の中に捉えられてきた世界史に革命的といっていいほどの新しい視野をもたらした。この視野によって複雑に対立し、からみ合う世界の各地域の文明が、はじめてその、「生きた現実」の多様性を保ったまま、統一的に整理される手がかりが与えられたといっていい。発表後数年を経てなお色あせぬのみか、将来、一層みのり多い成果が、この視野からもたらされるであろうと期待している。

    (小松左京) 

    目次

    東と西のあいだ

    東の文化・西の文化

    文明の生態史観

    新文明世界地図−比較文明論へのさぐり

    生態史観から見た日本

    東南アジアの旅から−文明の生態史観・つづき

    アラブ民族の命運

    東南アジアのインド

    「中洋」の国ぐに

    タイからネパールまで−学問・芸術・宗教

    比較宗教論への方法論的

    おぼえがき

    (中公文庫版) 

    『文明の生態史観』が発表後の約40年に書かれた『文明の生態史観はいま』(中公叢書、2001)で、梅棹忠夫さんは概念図を発想作製されたのか、歴史学者の川勝平太との対談みずから語っている。

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    「あれは気候学をベースにしているんです。気候学の基本概念には「理想大陸」というものがあります。たとえば北半球の大陸では、地球自転の影響で偏西風がおこり、それが地球自転の偏向力によって北へ曲がるのです。その結果、理想大陸の中央には乾燥地帯が斜めに走る。この図ではトポロジー(位相幾何学)の関係性を図にする手法を用いており、あえて距離や方向性については捨象してあります。

    もうひとつ、やはり『文明の生態史観』には書いていませんが、そのベースにあるのはケッペンの精密な気候区分なんです。森林の樹種をタイプ分類すると、西ヨーロッパは硬葉樹林のゾーンで、日本は照葉樹林のゾーンになる。これは対応します。

    そうなんです、生態史観の基本には、地球幾何学があるんです。その美しさが文科の人にはわかってもらえない。世界文明というものは合理的にできているのです。それは地球の構造からきているわけです。」(『文明の生態史観はいま』P.42〜44)



    農耕文明を守るために中国、インド、ロシア、イスラム圏では軍事的な専制国家が発達した。その東西の周縁に位置する日本や西欧などの農耕地域に住む民族は、専制国家の直接支配なくて、生態系の自生的な遷移(succession)によって農業文明から工業文明に進化した。

    「類別をあたえただけで、種別をはかる目が用意されていない。日本が東洋一般でない以上は日本と日本以外の東洋とがどのようになるかが、かたられねばならない。よくしらべてみたら、案外ひどくちがうものかもしれない」
    「第一地域では、動乱をへて封建制が成立するが、第二地域では、そういうようにきちんとした社会体制の展開はなかった。第二地域のあちこちでは、いくつもの巨大な帝国が、できてはこわれ、こわれてはまたできた。東と西にとおくはなれたふたつの第一地域が、もうしあわせたように、きちんと段階をふんで発展してきたのは、なぜだろうか。それをとうまえに、逆に、大陸の主体をしめる第二地域では、なぜ第一地域のような、順序よく段階をふんだ発展がなかったのか」
    「乾燥地帯は悪魔の巣だ。乾燥地帯のまんなかからあらわれてくる人間の集団は、どうしてあれほどはげしい破壊力をしめすことができるのであろうか。わたしは、わたしの研究者としての経歴を、遊牧民の生態というテーマではじめたのだけれども、いまだにその原因について的確なことをいうことはできない。とにかく、むかしから、なんべんでも、ものすごくむちゃくちゃな連中が、この乾燥地帯からでてきて、文明の世界を嵐のようにふきぬけていった。そのあと、文明はしばしばいやすことのむつかしい打撃をうける」

    「第二地域の歴史は、だいたいにおいて破壊と征服の歴史である。王朝は、暴力を有効に排除しえたときだけ、うまくさかえる。その場合も、いつおそいかかってくるかもしれないあたらしい暴力に対して、いつも身がまえていなければならない。それはおびただしい生産力の浪費ではなかったか。たいへん単純化してしまったようだが、第二地域の特殊性は、けっきょくこれだとおもう。建設と破壊のたえざるくりかえし、そこでは、一時はりっぱな社会をつくることができても、その内部矛盾がたかまってあたらしい革命的展開にいたるまでは成熟することができない。もともと、そういう条件の土地なのだった」

    「つまり第一地域というところは、まんまと第二地域からの攻撃と破壊をまぬかれた温室みたいなところだ。その社会は、そのなかの箱入りだ。条件のよいところで、ぬくぬくそだって、何回か脱皮をして、今日にいたった、というのがわたしのかんがえである」

    「文明の生態史観」は生態学の用語法で文明史を観察して記述する。「遷移」と訳すサクセッションは、特定の場所に生まれた植物群落が長期間をかけて、気候条件などに適応しながら、次第に別の群落に変化していく。新しい群落として定着した状態が「極相」(クライマックス)となる。

    「第一地域というのはちゃんとサクセッションが順序よく進行した地域である。そういうところでは、歴史は、主として、共同体の内部からの力による展開として理解することができる。いわゆるオートジェニック(自成的)なサクセッションである。それに対して、第二地域では、歴史はむしろ共同体外部からの力によってうごかされることがおおい。サクセッションといえば、それはアロジェニック(他成的)なサクセッションである」
    「生活水準があがっても、国はなくならない。それぞれの共同体は、共同体として発展してゆくのであって共同体を解消するわけではない。第二地域は、もともと、巨大な帝国とその衛星国という構成をもった地域である。帝国はつぶれたけれど、その帝国をささえていた共同体は、全部健在である。内部が充実してきた場合、それらの共同体がそれぞれ自己拡張運動をおこさないとは、だれがいえるであろうか」

    「戦前は文明国ということばをよくきいた。戦後はもっぱら文化国で、文明をいわなくなったのはどういたことだろうか。戦争にまけて、鼻べちゃになったので、文明国の名を返上したのだろうか。しかし日本は、戦争にまけても、依然として高度の文明国である。ある部分では、戦前よりも文明の度がすすんでさえいる。

    いちいち文明の特徴をあげるまでもないが、たとえば、巨大な工業力である。それから、全国にはりめぐされたぼう大な交通通信網。完備した行政組織、教育制度。教育の普及、豊富な物資、生活水準の高さ。たかい平均年齢、ひくい死亡率。発達した学問、芸術。」


    (中央公論文庫)

    posted by pengiin at 13:00| 東京 🌁| Comment(0) | 図書と文庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

    2019年04月23日

    『第四間氷期』安部公房

     舞台は現在の地球の状態を第四氷期(ウルム期)と次に来るべき第水期との間の、第四間氷期としてだけではなく、五〇〇〇万年に一度防れる「地質大変動期」としてとらえ、来たるべき過酷な未来で人類がどう生きられるかを描いている。

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     ソ連が世界に先駆けて「予言機械」を開発したのに続いて、日本でも中央計算技術研究所の勝見博士と頼木助手を中心とする開発チームによって「予言機械」が完成し、いよいよ実用段階に移ろうとする。実用化の前の段階として試験的に一個人の未来を予言することになり、その対象に選ばれたのは商事会社の会計課長だった。彼の一日の行動を追跡していた勝見博士と頼木は思わぬ殺人事件に遭遇することになる。
     その会計課長は、愛人の近藤ちか子のアパートに入り込み、その夜殺されてしまうのである。事件直後、自分が殺したと彼女は自首しているが、動機その他にあいまいな点が多く、勝見博士と頼木は真相究明のため、男の屍体の脳細胞を予言機械につなぎ真犯人を語らせることにした。それによると、妊娠三通間以内の胎児を買いとる胎児売買組織があり、ちか子は自分の胎児を売ったり、その期間に該当する胎児をもつ妊婦を組織に細介していたのである。その組織の存在を知った彼は、秘密保持のため阻織の者に殺されたのだと言う。
     同じころ、勝見博士の妻も妊娠初期だった。かかりつけの産院へ行くと、医師は不在で、応待に出た見知らぬ看護婦に粉薬を飲まされ、知らぬ間に別の場所に連れ出されて、そこで掻爬された。
     そんなとき、助手の頼木は秘密にすすめられている水棲哺乳動物の研究所(山本研究所)をなぜか知っていて、勝見博士に見学をすすめる。頼木ほ、水棲人間を飼育するために胎児売買が行なわれている、とにらんでいるのだ。
     山本研究所は、倉庫が建ち並ぶ海ぞいの一角にひっそりとあった。この研究所の目的は端的にいえば生物の計画的改造であった。飼育場には水棲ネズミ、水棲豚、水棲牛などの水棲哺乳類が順調に成育していた。しかも、各地の海底牧場からの引きあいもあって、これらの哺乳類を注文に応じて出荷し、どうやら事業としても成り立っているらしい。
     見学を終えて家に帰った勝見博士は、妻の掻爬のことがまた気になりはじめ、むりやり連れていかれたという産院の場所を思い出すよう彼女に促していると、電話が鳴った。声の主は、以前にもこの事件に深入りするなと脅迫めいた電話をかけてきた男だった。そして彼は、どこかで聞いたことのある声で、驚くべき意外な種明かしを始めた。
     電話器から流れる声の主は、いま、その声を聞いている勝見博士自身であるというのだ。つまり、予言機械で合成されたその声の主は、第一次予言で勝見博士の未来を見てしまい、思考の働きまでも事前に把握できる孝一次子言値で、棟木などを使って勝見博士が誤った方向に進まないよう牽制していたのである。そして、あの会計課長殺しの命令を下したのも勝見博士白身であった。
     その夜、勝見博士は殺し屋の案内で、第二次子音値の勝見博士と頼木を中心とする海底開発協会運営委員会の会合の席に連れていかれた。勝見博士が未来社会において必要な存在かを問う裁判であった。

    勝見博士は、未来が現実を裏切るかもしれないという可能性をまったく考えず、単に未来は日常の連続としか想像できない。これではやがて来たる水棲人間の未来社会には耐えられそうにもなく、有害人物としてしか存在できない、というのが死刑判決の理由になった。この判決も、未来の勝見博士が現在の勝見博士を裁いた結果であった。
     刑の執行を二時間後にひかえた勝見博士の前では、予言機械による未来の水棲人間社会がテレビに映し出されていた。

     水棲人間養育場には、勝見博士白身の子供が泳ぎまわっている。
    240名の生徒たちが水棲犬を追いかけたり、水中自転車を乗りまわしたり、魚とたわむれている。やがて彼らは海底工場や海底鉱山、油田に働きに出たり、専門教育を受けるようになるだろう。こうして大部分の母親が、少なくとも一人の水棲人の子供をもつときには、水棲人に対する偏見はすっかり消えている。やがて海底都市が完成して水棲人社会が実現し、自分たちの政府をもつようになった。
     そのころ、毎年三〇メートル以上の速度でふえつづけていた海面の上昇で、世界はすっぽり海中に沈んでいる。すなわち第四間氷期の終末は終わり、新しい地質時代が始まっていたのである。

    https://www.shinchosha.co.jp/sp/book/112105/

    雑誌『世界』1958年 7月号から翌年1959年3月号に連載。同年7月に講談社より単行本刊行。英文版『Inter Ice Age 4』(訳:D.E. Saunders)(Tuttle classics、1971年)


    「安部公房はAIが嫌い」

    https://business.nikkei.com/atcl/report/16/091200162/092000003/


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    2019年04月22日

    タロット探偵団

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    ミステリーとしてのタロット
    推理して事件が解決するプロセス

       誘惑 →事件 →謎 →探偵
    5600AF25-DBEA-46BA-A65A-863601BAA829.jpeg            ↓現場
       解決 ← 解説 ←判断 ←駆引
    (時計回りで探偵推理)
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    2019年04月21日

    大アルカナ22「世界」の行方は

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    自然と神の力が融合した象徴で、個性を存分に発揮されて、世界の循環を築いている。月桂樹の輪中で踊る両性具有者、それを見守る四大元素を表す天使たち。そして小アルカナの4大エネルギーにも対応してる。

    聖剣=風(思考)スペード

    聖杯=水(感情)クローバ

    金貨=地(欲求)ダイヤ

    棍棒=火(創造)ハート

    この「世界」の図案は、完成、完全、成功、満足を表す。そして大アルカナ22枚の物語の完結を意味する。

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    posted by pengiin at 16:18| 東京 ☀| Comment(0) | 美術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

    『思考ツールとしてのタロット』 (こどものもうそうブックス)

    世界を新しい視点で捉える思考ツールとしてのタロットのノウハウを分かりやすく伝授。

    神秘や霊感はまったく不要。タロットなんてぜんぜん知らないという人でもOK。

    自分の師を作り出し、22の視点を得て、カードの象徴を知り、人を占い、自分の思考ツールとして活用するまでを、全員が実際にタロットを使って体験。

    2012年7月に行われたイベント「思考ツールとしてのタロット」−−3時間にも及んだワークショップ&エンターテインメントショーを、イラスト・写真188点+文庫本換算で約211ページのテキスト(39字×15行の場合)で再現しました。


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    【目次紹介】

    はじめに

    第一部 想像してください。世界にまだ言葉が無いという世界を。タロットを使って師匠と魔獣を産み出す。


    リーディング

    タロット世界の誕生

    師と出会う

    タロットの構成

    混沌の世界へ

    欠落が生じる

    他者と出会う

    偶然を運命的必然に


    第二部 新たなる22の視点を獲得する


    カードの象徴を知る

    22の視点を得る

    師匠に名前をつける


    第三部 相談は何故失敗するのか? 探偵だけが何故解決できるのか? 実際にタロットを使ってみる。


    なぜ相談は失敗するのか

    「わたし」の否定

    主語を置き換える

    思考ツールとして

    世界体系×ランダム

    人をタロットで見る

    やりかた

    思い当たり例

    思考ツールとして活用

    魔術はスピリッツのスポート

    リーディング

    参考文献


    著者: 米光一成,  岡本麻梨絵,  N, 出嶋勉,     与儀明子。


    http://blog.lv99.com/?eid=1081694



    電脳ゲームやキャラクター・カードとして、タロットをライトに捉えている。

    思い当たるツールとして22枚のカードを使っております。「占い」という枠に捉われずにタロットのイメージと親しみ戯れるガイドとして、ものすごく読みやすく分かりやすく書かれてる。世界は完成、達成、統合、成熟、完了、ネクスト。

    カード解説はライトノベルより子供向けの絵本に近い感じ。イラストは和田誠さんくらい分かりやすい白いタッチです。

    posted by pengiin at 10:00| 東京 ☀| Comment(0) | 図書と文庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

    2019年04月20日

    黄帝内經の養生術

    昔は養生を心得、四時陰陽に応じ暮らした。自然からの邪気を封じるために、季節の変化に応じて生活していた。同時に無欲恬淡であれば、精神的刺激がさけられる。そうすると、体内には榮氣が滞りなく循り、体表は衞氣によってしっかり防衛された。


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        *四気調神大論

     春は「発生」の季節という。天地万物が芽生え生き生き栄える。

     春は夜更かししてもかまわないが、朝は早く起きる。

     春芽生えた万物と同じように心身ともに生き生きと陽気を楽しみ育てる。

     これに背くと春によく活動する肝気を病む。すると、夏に寒性の病気にかかりやすい。


     夏は「生長」の季節という。天地の陰陽の気が盛んになり、陽気が多く発生するので、万物がどんどん生長して咲き栄える。

     夏は夜は遅く寝て、朝は早く起きる。

     日の長さと暑さを厭わず、物事に怒らず気持ちよく過ごすとよい。

     夏の満開した花と同じく陽気をほどよく発散させよう。

     これに背くと、夏によく活動する心気が傷む。すると、秋になり瘧おこりになる。


     秋は「収斂」の季節という。万物が成熟し収穫される。空から風が吹き、大地には粛正とした気配が漂う。           

     秋は早寝早起きをすべし。

     心安らかにし陽気を潜める。           

     これに背くと、秋によく活動する肺を傷む。すると、冬は下痢ぎみとなる。                           


     冬は「閉藏」の季節という。万物の生機が閉じこもる。

     至る所で凍り、地が裂けて、天の陽気は遠ざかる。 

    冬は夜早く寝て、朝はゆっくりと起きるのがよい。

     欲望を潜めて、体内の陽気を漏らさないよう心がける。

     寒さを避けて、身体を暖かく包んで過ごす。

     これに背くと、冬よく活動する腎気が傷む。すると翌春に足がしびれ、腰が曲がる。



    これら四時陰陽の作用により、万物には「発生」「成長」「収斂」「閉藏」の規則があるのである。

    此の自然の法則に従って、春夏は陽気を高めて、秋冬は陰気を補う。 大体これに逆らうと災難、病気が生じる。

    天の四時陰陽の狂いは人を病気にしてしまう。養生している人は、自然の変化に順応できるので、気候が狂っても堪えられる。

    posted by pengiin at 16:00| 東京 ☀| Comment(0) | 美術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

    「令和」は医学書『黄帝内経』にあった

    新年号「令和」について調べている人がいます。作家の大岡玲さんがそれに気づき、取り上げております。


    「中国最古の医学書『黄帝内経』に「令和」があり、しかも、鍼治療の要諦を述べた『霊枢』編第九節「終始」にあるとのこと。たしかに「知迎知随 気可令和」という一節があった。これは、要するに、経絡の扱いをよく知って気を正すべし、ということのようで、いやはや、新元号は鍼治療の目標でもあるわけだ。」 

    https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/251690から一部転載;


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    『霊枢』終始第九の最初のほうに。
    ちなみにこれは、鍼の刺し方の「迎随の補瀉」といわれることについて書かれている一節です。
    知迎知隨.氣可令和(迎を知り、隨を知りて氣和せしむべし)

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    『荘子』刻意篇にその導引について書かれており、そこの部分を晋(A.D.265〜420)の李頥という人が解説をした言葉に「導引者、導気令和、引体令柔」とあるのです。

    つまり導引とは、気を体内に導いて調和し、体を引いて柔軟にする」という意味で「令和」はまさに気を和する、という意味です。

    http://tao-academy.jp/japantaoism/japantaoism05.html
     

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    新年号「令和」は万葉集から拾われた、中西進さんの勧めは神懸かりです。

    posted by pengiin at 13:19| 東京 ☁| Comment(0) | ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

    特別展「没後130年 河鍋暁斎」2019年5月19日まで

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    幕末から明治初年にかけて活躍した河鍋暁斎(1831-89)は、幅広い画業で知られる。

    暁斎の多様な作品群から「写生帖」や「日記」「下絵」「画稿」など、暁斎の表現する制作の様相を据える。

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    幕末明治の表現を検証する手がかりとしての「ネットワーク」というキーワードのもと、暁斎が手がけた錦絵や挿絵本、工芸作品なども展観される。

    暁斎の創造力と時代のネットワークを合わせ鏡のように考察することで、暁斎の作家・作品像を再検証して、その時代的、芸術的意義を展示される。

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    【前期展示:4月6日〜 4月29日】

    【後期展示:4月30日〜 5月19日】

    兵庫県立美術館  
    https://web.pref.hyogo.lg.jp/bi01/kawanabe.html
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    凄いエネルギッシュな展示です。躍動感あふれる民衆の描写が素晴らしい。
    posted by pengiin at 10:53| 東京 ☁| Comment(0) | 美術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

    2019年04月19日

    荘子「境界のない境界」

    東郭子が荘子に訊ねた。

     「あなたのおっしゃる『道』とは、どこにあるものですか」

     「どこにでもあるよ」

     「例をあげて明示していただきたいのですが」

     「虫けらの中にある」

     「それはまた下等なものですね」

     「ヒエの中にもある」

     「ますます下等です」

     「煉瓦の中にもある」

     「ひどくなる一方ではありませんか」

     「大小便の中にだってあるぞ」

     からかわれていると思ったのか、東郭子はむっつりと黙り込んでしまった。そこで荘子はおもむろに説き始めた。

     「どこにあるかといわれれば、こう答えるほかないが、あなたの問いは核心をついてはおらぬ。こんな話があるよ。式典係の役人が、豚の肉づきを確かめる為の心得を市場の親方に尋ねたところ、親方は、『頭を見るよりは背を見よ、背を見るよりは尻を、尻よりは足を調べるがよい、下へさがればさがるほど、肉づきはよくわかるものだ』、と答えたという。今、『道』について下等なものばかりを例にあげたのも、この方が『道』の全貌を知るのに便利だと考えたからだ。

     真の『道』は、事物を離れては存在せぬが、かといって、どこにあると限定できるものではない。それは、真の教えが一つの形式に限定されないのと同様である。例えば、私は今、『道』はアマネク存在するという意味の事を言ったが、それを表現するのにも、周(しゅう)とか扁(へん)とか咸(かん)とかいったいろいろな言葉があるだろう。言葉としては異なっていても、その内容はいずれも同一なのである。

     あなたも私とともども無何有(むかゆう)の宮に遊び、万物斉同の境地を得て、窮まりなき『道』のはたらきに従い、無為自然であってみようとは思わぬか。そこには、虚無静寂にして調和に充ちた世界が開けるであろう。心は空々漠々として、物事の由来だの、成り行きだの、結果だのを思い患うこともない。このように大虚のうちを逍遥してこそ、人は窮まりなき真知をおのが物とすることが出来るのだ。

     万物を万物たらしめる『道』は、万物にあまねく内在し、万物との間に境界を持たない。もし境界を持つならば、それは他の物と区別される物の一つとなって、『道』ではなくなるであろう。かといって『道』は、万物それ自体ではない。『道』と万物との境界は、いわば境界のない境界なのである。万物の生滅をつかさどりながら自らは生滅を超越した存在、それが『道』なのだよ」

     (『荘子』岸陽子 訳より)



    「荘子は、自然を損なうものとして、人為を否定した。人為の観点からすれば無用なものほど、実は貴いのであるという価値の転換が、ここに成立する。
    無用であればあるほど、人為とのかかわりが薄れる。つまりその自然が保たれる。人間が何者の道具にもならず、自己のために生きてこそ、天寿を全うできると説くのである。『無用の用』という逆説でしか表現しえない価値こそ真の価値なのだ」

    岸陽子「中国の思想・荘子」冒頭より。

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    ペンギンタロットの世界へ

    http://koinu.cside.com/


    ペンギンタロット画像

    http://pentacle.jp/?pid=108373164

    posted by pengiin at 09:00| 東京 ☀| Comment(0) | 叡知 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

    2019年04月17日

    生殖器官「花」が咲き、後から栄養器官である「葉」が生えるのか

    植物の増殖過程では、花が開く春か秋には関係なく、葉が茂るので光合成が営まれて栄養分が蓄積される。
    それから花芽が形成されて、花芽が成長して開花・受粉の過程を経て果実がつくられ、成熟して母体を離れて新しい個体として育つ。
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    この過程には大量のエネルギーが必要で、生殖の過程と光合成による獲得が進行が成されると思われる。
    しかし自然界では他の要因も関係して、栄養成長と生殖成長の段階が明瞭に区別されることもある。
    季節や成長のタイミングで開花させる植物の戦略には、栄養成長とは相いれない原理が働いている。鱗茎に蓄えられている光合成産物、幹や根の蓄えがエネルギーの供給源にもなる。果実成長の段階では、光合成と同時進行、成熟の最終段階では、植物体の消耗を伴って成熟過程がなされる。
    posted by pengiin at 10:00| 東京 ☀| Comment(0) | 美術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

    2019年04月16日

    『惨事のあと、惨事のまえ』 デイヴィット・ピース

    一九二三年九月一日土曜日、午前十一時五八分、関東大震災が起こり、それは、四分後に収まった。龍之介は自宅の書斎に居た。家を焼かれた親戚が次々とやってくるなか、知人の康成が気にかかり家族を残して、彼の住む浅草方面へと歩き出す。

    「幽霊かと思った。死んだものとばかり思っていた、」と龍之介は言った。
     康成は笑った。
    「もはやみなが幽霊ですよ。幽霊か孤児です。」

    出逢ったふたりは今東高と三人で、遊郭吉原へ行く。3.11 惨事のあと、惨事のまえが現実と虚構を交えて描かれる。


    『それでも三月はまた』(講談社)

    アンソロジー【収録作】

    谷川俊太郎「言葉」
    多和田葉子「不死の島」
    重松清「おまじない」
    小川洋子「夜泣き帽子」
    川上弘美「神様2011」
    川上未映子「三月の毛糸」
    いしいしんじ「ルル」
    J.D.マクラッチー「一年後」
    池澤夏樹「美しい祖母の聖書」
    角田光代「ピース」
    古川日出男「十六年後に泊まる」
    明川哲也「箱のはなし」
    バリー・ユアグロー「漁師の小舟で見た夢」
    佐伯一麦「日和山」
    阿部和重「RIDE ON TIME」
    村上龍「ユーカリの小さな葉」
    デイヴィッド・ピース「惨事のあと、惨事のまえ」


    半透明の歯車が帝都を襲った震災の瓦礫の彼方に蠢き怪異を語る。

    http://pengiin.seesaa.net/article/465048784.html


    小説「惨事のあと、惨事のまえ」に対して、震災について本人たちの散策した光景を、川端康成が書いた随筆と読み比べてみる。三人が揃って幽霊のように想えるのは、どちらの描写だろうか。



    芥川龍之介氏と吉原

     川端 康成


     大正十二年の地震の数日後に、私は今東光君と田端の芥川氏のお宅へ見舞ひに行つた。

    (中略)芥川氏と今君と私とは、多分芥川氏が云ひ出されたやうに思ふが、吉原の池へ死骸を見に行つた。芥川氏は細かい棒縞の浴衣を着て、ヘルメツト帽を冠つてゐられた。あの痩身細面にヘルメツト帽だから少しも似合はず、毒きのこのやうに帽子が大きく見え、それに例のひよいひよいと飛び上るやうな大股に体を振つて昂然と歩かれるのだから、どうしたつて一癖ありげな悪漢にしか見えなかつた。荒れ果てた焼跡、電線の焼け落ちた道路、亡命者のやうに汚く疲れた罹災者の群、その間を芥川氏は駿馬の快活さで飛ぶやうに歩くのだつた。私は氏の唯一人颯爽とした姿を少しばかり憎んだ。そして、自警団か警官がその怪しげな風態を見咎めれば面白いにと、ひそかに期待しながら、足の早い氏にとつとつ附いて行つた。

     吉原遊廓の池は見た者だけが信じる恐ろしい「地獄絵」であつた。幾十幾百の男女を泥釜で煮殺したと思へばいい。赤い布が泥水にまみれ、岸に乱れ着いてゐるのは、遊女達の死骸が多いからであつた。岸には香煙が立ち昇つてゐた。芥川氏はハンケチで鼻を抑へて立つてゐられた。何か云はれたが、忘れてしまつた。しかしそれは、忘れてしまつた程に、皮肉交りの快活な言葉ではなかつたらうかと思ふ。

     吉原で芥川氏は一人の巡査を捕へて、帰り路十町余りも肩を並べて歩きながら、いろいろ震災の話を引つぱり出さうとしてゐられた。おとなしい巡査はそれに一々答へてゐた。こんな風な一個市井の物好きらしく巡査と歩く芥川氏も、私には少々意外であつた。

     生前の芥川氏に余り親むこともなく過ぎた私には、故人を思ふと、その日のヘルメツト帽であたりかまはず颯爽と歩いてゐられる姿が第一に浮んで来る。その頃はまだ死を思はぬ快活さであつた。


    川端康成「芥川龍之介氏と吉原」

    初出:1929(昭和4)年1月


    川端 康成(1899年6月14日 - 1972年4月16日)日本の小説家、文芸評論家。

    https://shogakukan.tameshiyo.me/9784093522472

    posted by pengiin at 15:00| 東京 ☀| Comment(0) | 図書と文庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

    奇術への探求

    【奇術】の意味

    1 観客に解らないような仕掛けで、人の目を眩まし、如何にも不思議なことが起こったように見せる芸。

    2 不思議に感じる技である。

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    タロットの場合は何処から奇術師がやって来たのか想像すると、シンボルがカード全面に広がる構成となっている。
    posted by pengiin at 12:07| 東京 ☀| Comment(0) | 美術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

    2019年04月15日

    『芥川龍之介選 英米怪異・幻想譚』(岩波書店)

    気鋭の研究者と当代随一の翻訳家がタッグを組み、芥川が選んだ「新らしい英米の文芸」を蘇らせる!
    旧制高校の英語副読本として編まれたアンソロジー八巻より、二〇の短篇をさらに精選。ポーやスティーヴンソンから本邦初訳の作家まで、芥川自身の作品にもつながる“怪異・幻想”の世界を全て新訳で堪能する。イェーツやキャロルなどの芥川による翻訳も収録。
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    【The Modern Series of English Literatureより】
    身勝手な巨人……… オスカー・ワイルド (畔柳和代 訳)
    追い剥ぎ……… ダンセイニ卿 (岸本佐知子 訳)
    ショーニーン……… レディ・グレゴリー (岸本佐知子 訳)
    天邪鬼……… エドガー・アラン・ポー (柴田元幸 訳)
    マークハイム……… R・L・スティーヴンソン (藤井光 訳)
    月明かりの道……… アンブローズ・ビアス (澤西祐典 訳)
    秦皮の木……… M・R・ジェイムズ (西崎憲 訳)
    張りあう幽霊……… ブランダー・マシューズ (柴田元幸 訳)
    劇評家たち あるいはアビー劇場の新作……… セント・ジョン・G・アーヴィン (都甲幸治 訳)
    林檎……… H・G・ウェルズ (大森望 訳)
    不老不死の霊薬……… アーノルド・ベネット (藤井光 訳)
    A・V・レイダー……… マックス・ビアボーム (若島正 訳)
    スランバブル嬢と閉所恐怖症……… アルジャーノン・ブラックウッド (谷崎由依 訳)
    隔たり……… ヴィンセント・オサリヴァン (柴田元幸 訳)
    白大隊……… フランシス・ギルクリスト・ウッド (若島正 訳)
    ウィチ通りはどこにあった……… ステイシー・オーモニア (柴田元幸 訳)
    大都会で……… ベンジャミン・ローゼンブラット (畔柳和代 訳)
    残り一周……… E・M・グッドマン (森慎一郎 訳)
    特別人員……… ハリソン・ローズ (西崎憲 訳)
    ささやかな忠義の行い……… アクメッド・アブダラー (森慎一郎 訳)

    【芥川龍之介作品より】
    春の心臓・・・ウィリアム・バトラー・イェーツ (芥川龍之介 訳)
    アリス物語(抄)・・・ルイス・キャロル (芥川龍之介・菊池寛 共訳)
    馬の脚・・・芥川龍之介


    芥川龍之介が生きた頃の気鋭作家から、若い学生たちに紹介した作品として読むと二度美味しいアンソロジーです。
    霊感と想像する力で三桁倍速する英米怪異・幻想譚の面白さ!

    澤西 祐典 
    1986年生、作家・別府大学講師・日本近代文化研究者。小説作品に『フラミンゴの村』(すばる文学賞)などがある。研究者としての専門は芥川龍之介 

    柴田 元幸 
    1954年生、翻訳家・東京大学名誉教授・米文学者。雑誌『MONKEY』責任編集。数々のエッセイ集や翻訳論などでも知られる。
    posted by pengiin at 13:00| 東京 ☀| Comment(0) | 図書と文庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

    『魔術 芥川龍之介幻想ミステリ傑作集』彩流社

    「謎解き」と「解かれざる神秘」という二重の意味でミステリにこだわった芥川の犯罪、探偵、風刺、幻想、神秘、そして心の声が聞こえてくるミステリアス傑作集。
    芥川龍之介の文章は、身辺の出来事を写生しただけのような心境小説風の小品から、それどころか随筆として書かれたものさえ、ほのかに神秘が匂い立っている。
    今もよく読まれている芥川は、その意味では現役の、生きているといってもいいほどの存在なのだが、その作品にも人生にも死にも、まだ解かれていない謎があるのである。
    現今のアンソロジーにもあまり入らない名作が現代仮名遣いで甦る!

    【収録作品】

    二つの手紙、開化の殺人、疑惑、魔術、沼、影、早春、鴉片、彼、蜃気楼、春の夜は、三つの窓、死後、十本の針(遺稿)、饒舌、猿蟹合戦、桃太郎、酒虫、さまよえる猶太人、るしへる、黄梁夢、仙人、おしの、女仙、浅草公園 ―或るシナリオ

    解説 理知と不可知のラビリンス 長山靖生


    【関連記事】

    青空文庫で読みくらべ。

    https://www.aozora.gr.jp/index_pages/person879.html

    posted by pengiin at 09:00| 東京 | Comment(0) | 図書と文庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

    2019年04月13日

    詩人にして偉大な魔術師

    港町ナポリでは詩人ウェルギリウスは偉大な魔術師と伝えられる。
    ウェルギリウスを軽蔑しなかったのみならず、ウェルギリウスを知恵にあふれる魔術師とあがめ、素朴に彼の偉大さを讃えた。

    ダンテに地獄と煉獄を案内する『神曲』の中では「理性と哲学」の象徴とされた。中世ヨーロッパにおいては、父母が魔術師であったという説が流布する。
    「ウェルギリウスという人物はスティミションという名前の陶工とルクレティウスの妹マイアの息子である」
    「ウェルギリウスの父スティミションは魔術師であり、マギウスなる国の密使に奉仕する占星術師であった」
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    ヘルマン・ブロッホ「ウェルギリウスの死」より

    「ふたたび見ることができるようになった彼の眼の前に、ふたたび無はかぎりなく変容し、現在と過去の存在と化し、ふたたびかぎりなく展開して時の輪となり、無限になったこの円環を今一度閉ざそうとしていた。かぎりない天の球体、ふたたび蒼穹を形づくったかぎりない天の円蓋、無限の記憶のうちに七彩のアーチに縁どられたかぎりない世界の盾。ふたたび光と闇があり、昼と夜があり、夜々と日々があり、ふたたび無限は高さと幅と深さに応じて秩序付けられる。」

    posted by pengiin at 19:00| 東京 ☀| Comment(0) | 叡知 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする