2020年05月22日

入沢康夫『季節についての試論』

入沢康夫『季節についての試論』

季節に関する一連の死の理論は 世界への帰還の許容であり青い猪や白い龍に殺された数知れぬ青年が 先細りの塔の向うの広い岩棚の上にそれぞれの座をかまえて ひそかに ずんぐりした油壷や泥人形 またとりどりの花を並べ 陽に干していると虚しく信ずることも それならばこそ 今や全く自由であろう 支配者の遺体を模して束ねられた藻や藁を焚き こうすることで 古い春と その記憶を追い立て 生命と受難の観念を あえて声高に語ることによつて いつそう深く地中に埋め 窒息させ 二度と生え繁ることのないようにと しきりに祈る彼らであつてみれば 彼らは 当然 世界の屍臭を むしろ身にまとうに足る芳香であるとことさらに誤認し 見せかけだけの儀式の力で この卑劣な狂躁を永遠のもの 地表を蔽ううまごやしとおなじく 四季による消長はありながらもついに不滅な 一つのいとなみとしようと欲するが この作られた愚かさ この水平な堕落は 単なる偶然の所産 あるいは 監視者の怠慢としてかたづけること

はできない(1965年)

posted by pengiin at 16:00| 東京 ☁| Comment(0) | 図書と文庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス: [必須入力]

コメント: [必須入力]