2020年09月16日

権利について

「政治の幅はつねに生活の幅より狭い。本来生活に支えられているところの政治が、にもかかわらず、屡々、生活を支配しているとひとびとから錯覚されるのは、それが黒い死をもたらす権力をもっているからにほかならない。一瞬の死が百年の生を脅し得る秘密を知って以来、数千年にわたって、嘗て、一度たりとも、政治がその掌のなかから死を手放したことはない」

(埴谷雄高『幻視のなかの政治』より)


 

「恐らく歴史のなかで、いまだ嘗て、ひとつの党内でこれほど多くのみ敵対がつくりだされた例はまだ一度もなかった。中世期のヨーロッパ全土に黒死病が名状しがたい恐怖をひきつれて横行したごとく、ほとんど理解しがたい死に方をも含めた、凄まじい死は党内の隈々まで徘徊した《やつは敵だ。やつを殺せ。》という古い政治の公式が毎日何処かの暗い隅で叫ばれ、曠野のなかの深い穴へ葬むられる黒死病の屍体に近いほど数多い無惨な死の顔が絶えずそこで眺められたが、さて、そのとき、《敵》とは何かについて真塾に考えつめたものがひとりもなかったとは、驚くべきことである。」

 (埴谷雄高「敵と味方」)

posted by pengiin at 15:00| 東京 ☁| Comment(0) | 図書と文庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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